最新更新日:2024/04/18
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校訓 : 「黒潮魂」(明るく・賢く・逞しく) /  第75期生徒会スローガン「笑進(しょうしん) 仲間を愛し、地域に愛される大中生へ」 / 笑われて、笑われて、つよくなる。(太宰治 日本の作家

9/20(火)昨日は「敬老の日」 ある夏の日の出来事(長文)

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 ある夏の日、熊本から大阪伊丹空港行きの飛行機に乗り込むと、私の座席の隣には既にお年を召されたご婦人が座っておりました。
 離陸後、シートベルト着用サインが消えると、そのご婦人はおもむろにビニール袋からサンドイッチを取り出し食べ始めたのです。丁度時間は午後一時過ぎ、きっとお昼を食べる時間がなかったんだろうなとそんなことを思いながら、目を閉じ、いつものようにイヤホンを耳に音楽を聴いておりました。私にとって飛行機での移動時間はいつも「眠りの時間」となっているのです。そのうち、食べ終わったご婦人も眠りについたようでありました。
 それから間もなく、CAさんがドリンクサービスに訪れ、座席前のテーブルを下し爽やかなアップルジュースをいただいていると、隣のご婦人が目を覚まし私のテーブルの上の紙コップを何度も何度も見つめているのです。「きっと、眠っている間にCAさんが行っちゃって、飲み物を下さいと言い出せないでいるのかなっ。」とそんなことを思い、「飲み物、もらいましょうか?」と声をかけると「はい、お願いします。」とのこと。ですので、後方に行ったCAさんに合図をし、飲み物を持ってきていただいたのです。
 そのことをきっかけに、そのご婦人が私に話しかけてくるようになったのです。話しかけられればその度にイヤホンを外し会話をしておりましたが、「えぇ〜い、もう眠るのは諦めよう。この方のお話につき合おう!」(心の中の言葉)と心に決め、イヤホンをカバンにしまい、完全なる「世間話モード」に突入したのであります。(「袖振り合うも多生の縁」と言いますものね)
 そのご婦人のお話だと、飛行機に乗るのは本当に久しぶりであること、大阪到着後、法要のため京都に向かうということ、阿蘇市にお住まいで大きな地震を体験したこと、自宅は大丈夫だったけれど阿蘇神社が倒壊したこと、現在はご主人と二人暮らしであり息子さん家族は大阪と福岡にお住まいであること、お嫁さんはJALのCAさんであること等、いろんなお話をきかせていただきました。当の私はと言えばずっと聴き役。されど、これも乙なものでありました。
 そうこうしているうちに間もなく伊丹空港に到着する時間となったのであります。するとそのご婦人は、「伊丹空港から京都行きのバスへの乗り方がわからなくて不安なんです。」とおっしゃったのです。ですので、「では、私が教えてあげますね。」ということで、着陸後、タラップを降り、到着出口に向かった老老の二人でありました。その途中、「あなたの後をついて行けばいいのですよね?」とおっしゃっておりましたから、よっぽどバスへの乗り換えが不安だったのだと思います。という訳で、ジッコ(私)の後をバッコ(ご婦人)がついてくるの体で、到着出口の外にあるバスチケット売り場を目指したのであります。
 「おばあちゃん、京都行きのバスチケットは、タッチパネルの「京都」を押せば大丈夫ですよ。お金は1,310円みたいなのでここに入れて下さいね。」と伝えると、ご婦人はお金を入れタッチバネルを押しました。けれど、なぜか出て来たチケットは「西宮」行きのもの…。「えっ?」と思いパネルを見ると、「京都」の下に「西宮」があり、おばあちゃんの指が誤ってそっちをタッチしてしまったようなのです。「ちょ、ちょっと待ってて下さいね。」と言いながら、その西宮チケットを預かり、券売窓口まで走り、差額を支払い、京都行きのチケットをやっとゲットしたのであります。それを手渡しながら、「これで安心ですね。乗り場は5番のようですよ。ここに並んでいれば大丈夫ですからね。」と、5番乗り場までお連れしそこでお別れをしたのです。そのご婦人、何度も何度も頭を下げお礼を言ってくださり、こっちの方が恐縮する程でありました。
 その後、私は、予期せぬこのような緊迫した状態から一刻も早く自分を解放すべく、すぐ傍にある「喫煙所」を目指すのであります。そこで待っていたものは、何とも言われぬ「心の一服」でありました。ですが、そうしながらも、「あのおばあちゃん、ちゃんとバスに乗れるかなぁ…。」と心配になり、京都行きのバスが出るまであと20分程度でもあることだし、ここで一服しながらその時間を待とうと、二本、三本と至福の時を過ごすこととなるのです。
 京都行きバスの発車5分前、5番停留所に行ってみると、列に並んでいたそのご婦人が何やらゴソゴソと自分のバッグの中をさぐっているではありませんか。「ん?」と思いおもむろに駆け寄り「おばあちゃん、どうしました?なんかありました?」と声をかけると、「バスの切符が見当たらないんです…。」と不安げな表情でまたバッグの中を探すのです。「うおぉぉぉ〜!」(これは心の中の叫び)と思いつつ、間もなくバスはやってくる、チケットがないと乗り込めない、という更に緊迫した状況が頭の左右をもの凄い勢いで行ったり来たりする中、「ちょ、ちょっと待ってて下さいね。私、急いでチケットを買ってきますからね!」とダッシュでチケット売り場に向かい購入、窓口の方からおつりをもらうのももどかしい程でありました。そして、無事、おばあちゃんにチケットを手渡し、「これで乗れますね。見つからないチケットはバスに乗ってからゆっくりと探して下さいね。もし見つかったら、到着した京都の窓口で払い戻しができますのでね。」と穏やかに(本当は頭の中は結構パニック)伝えると、とてもほっとした表情をされたのです。その後、ご婦人に「お名刺でも」と言われたので名刺を手渡しその場を後にしました。ですが、どうしても気になってしまい、おばあちゃんが京都行きのバスに乗り込む姿を遠くから確認した後、今度は猛ダッシュで自分が乗る飛行機の搭乗口を目指したのであります。
 それから一週間程経ったある日のこと、学校に一本の電話が入りました。それはそのご婦人からのものでありました。
 あの後、無事京都に着けたこと、そして、亡き母の法要も無事に終えたこと、チケットはバッグのポケットに大事にしまってあったこと、また、清算もできたこと、今は無事に阿蘇に戻ったこと、そして、本当にお世話になりましたということを伝えていただいたのです。なんか、そのお声を聴いただけで、とっても安心というか穏やかな気持といいますか爽やかな気持になった自分でありました。
 えっ?二度目にダッシュでチケットを購入した際のチケット代は戻ってきたのかって?
 いいえ。その時、ご婦人は気が動転していてそんな成り行きなんてきっと覚えていないはずなのです。
 常日頃、こんだけ腹黒い私でありますので、人生、たまにはいいことをしようかなってそう思っています。
(お話はここまで)
 以前、ある方から、「徳を積む」という言葉を聞いたことがあります。自分のしたことがそんな大それたこととは思っていません。ですが、そのご婦人にとってはちょっとでも助けになったのではないかと、そう思っています。
 今、生徒会執行部の面々は岩泉の台風被害やイタリアの地震災害支援ということで募金活動を企画しているようでありますが、小さなことでいいのです、困っている人の助けになるって一体何なのだろう、そこに寄り添うってどういうことなんだろうと、そんなことを考えてくれるだけでとっても嬉しいですし、その対象は、遠くで困っている人ばかりではなく、自分の身近に居る人への気付きといいますか目を向けることも、とっても大事なんじゃないかなと、そんなことも思ったりしています。
 はい、これで「敬老の日」にまつわるお話は終わりです。(何が敬老かって言えば、もし隣に座っていた人が若いとか中年の方なら、きっと自分自身こんな展開にはしなかったように思うものですからね。)
 長文を読んで下さり、ありがとうございました。
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