取手市教育委員会

取手市立中学校の生徒の自死事案について(総括)


 平成27年11月11日,市立中学校に通う生徒さんが,学校におけるいじめと不適切な指導により,自ら命を絶たれました。市教育委員会といたしまして,一人の生徒さんのかけがえのない命をお守りすることができなかったことを改めてお詫び申し上げますとともに,お亡くなりになられた生徒さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

ご遺族の皆様には,長きにわたり市教育委員会並びに学校における不適切な対応により,ご心労,ご心痛をおかけしてまいりましたこと,また,当該中学校平成27年度卒業生並びに保護者の皆様には,ご不安,ご心配をおかけしてまいりましたこと,重ねてお詫び申し上げます。

平成31年3月20日,県に設置いただきました取手市立中学校の生徒の自殺事案に係る調査委員会より,調査結果,評価結果をお示しいただきました。また,その結果に基づき,令和2年1月18日に,取手市いじめ問題専門委員会より,取手市立中学校の生徒の自死事案に係る再発防止策の提言をとりまとめ頂きました。この再発防止策の提言には,令和元年10月15日から11月15日にかけ実施いたしましたパブリックコメントにてお寄せいただきました市民をはじめとする多くの皆様からの貴重なご意見も参考にさせて頂きました。

1.市教育委員会並びに学校が対処すべき事項


 今回の事案は,市教育委員会並びに学校における不適切な対応を行ってしまった個々の教職員の問題はもちろんのことですが,その問題を市教育委員会,学校それぞれが,組織として対応できなかったことが,問題の根幹であったと考えております。

お亡くなりになられた生徒さんは,学校におけるいじめと誤った指導により,心深く傷つき,悩まれ,不安で苦しい学校生活を送られていました。当時,学校はお亡くなりになられた生徒さんのその深い悩みに気づき,寄り添っていくことができませんでした。一方で,複数の教員がお亡くなりになられた生徒さんの普段とは違った様子に違和感を持ち,心配し,声をかけるという場面もありましたが,その異変を組織として捉え,継続して寄り添い,見守るということには至りませんでした。

市教育委員会においても組織としての対応がなされませんでした。ご遺族からの要請に対し,法の無理解とまで指摘されましたように,たとえ個々の職員が間違った判断や対応をしてしまったとしても,最終的には,組織として間違いを正し,適切に法に則った対応がなされるべきでした。

市教育委員会並びに学校に共通する問題の本質は,児童生徒ならびに保護者の皆様のお一人おひとりのお気持ちにきちんと向き合うこと,そのことに継続して組織として適切に対応していくということができなかった,ということであると考えております。

市教育委員会並びに市内公立全小中学校は,県よりお示しいただきました調査結果,評価結果の全てを厳粛に受け止め,また,専門委員会にて策定いただきました再発防止策の提言[*1] の一つひとつの施策について,着実に実施してまいります。特に,学校教育において重要となります再発防止策につきまして,この春より,取手市の新しい学校教育3つの取組を進めてまいります。

2.取手市の新しい学校教育3つの取組


取手市の新しい学校教育3つの取組,一つ目の取組みとして,中学校における全員担任制[*2],小学校におけるチーム指導[*3]を導入します。複数の教職員の目で児童生徒を見守り,児童生徒一人ひとりの日常の小さな変化に対応していきます。また,児童生徒も多様な大人との関係性を通して,人生においてより豊かな人間関係を築いていくことが期待できます。


二つ目の取組みとして,すべての小中学校に教育相談部会システムを導入します。一人ひとりの児童生徒の不安,悩み,心配事に対して,継続して組織として対応していきます。各小中学校に設置する教育相談部会には,管理職,新たに設置される教育相談担当教員,また,専門職であるスクールカウンセラー,ケースによってはスクールソーシャルワーカーも参加し,一つひとつの事案について問題解決を図ってまいります。


三つ目の取組みとして,2学期制を導入します。子どもたちがゆったりとした環境の中,学校教育を充実していくことができるよう,また,教員も子どもと向き合うための機会を増やしていきます。


全員担任制(小学校はチーム指導)により,児童生徒を複数の目で見守り,一人ひとりの児童生徒の小さな変化に気づき,問題の早い段階から教育相談部会において,継続して対応していく取組みは,県内でもあまり類例をみない取組みであり,県ともしっかりと連携し,施策を進めてまいります。


3.これからの歩み


改めてお亡くなりになられた生徒さんが受けた深い苦しみと悲しみ,そして絶望感に思いを深めつつ,学校教育と教育行政の根本を見つめなおし,市教育委員会と市内公立全小中学校が組織として一体となり,しっかりと再発防止策に取り組んでまいります。


結びに,国,県並びに市関係機関の皆様,本件事案の調査ならびに再発防止の実施計画の策定においてご指導,お力添えいただきました関係機関,関係者の皆様,市民の皆様には,多大なるご支援賜りましたこと,心より感謝申し上げます。いじめにより自ら命を絶ってしまわれた生徒さんへの追悼と私たちの深い反省を心に刻みながら再発防止策の充実に努め,教育の場が子どもたちにとり安寧な場所となるよう努めてまいりますので,関係各位の皆様方におかれましては,今後とも御指導賜りますようよろしくお願い申し上げます。


令和2年3月2日

取手市教育委員会 教育長 伊藤 哲


[*1]再発防止策の提言にて,学校に対する10の再発防止策,市教委に対する5つの再発防止策,教育委員会委員に対する1つの再発防止策,県教委に対する2つの再発防止策をお示しいただきました。

[*2]中学校においては,固定担任制を廃止します。なお,施策開始初年度である令和2年度については,中学3年生は,受験期であることを考慮し,全員担任制は実施しません。

[*3]小学校においては,クラス担任は従来通り配置します。

◆取手市立中学校の生徒の自殺事案に係る調査委員会(平成31年3月20日)

「取手市立中学校の生徒の自殺事案に係る調査結果について(概要版)」

「取手市立中学校の生徒の自殺事案に係る調査結果について(全体版)」


◆取手市いじめ問題専門委員会(令和2年1月18日)

「取手市立中学校の生徒の自死事案に係る再発防止策の提言(検討の経緯について)」

「取手市立中学校の生徒の自死事案に係る再発防止策の提言」

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