【学校長コラム】 卒業式

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今朝、校門近くの桜が開花していることに気づいた。多くの日本人が抱くイメージでは、桜の花といえば入学式ということになるのかもしれないが、近年の満開宣言は1年生の入学を待ってくれない。温暖化の影響なのか、入学式にはすっかり葉桜となっていることもしばしばである。今日は卒業式。開花に気づいてか、しばし足を止めて桜の木を見上げている6年生の姿があった。この先は、桜の花といえば卒業式というイメージに変化していくのかもしれない。

6年生や保護者はもとより、教師にとっても卒業式は極めて特別な学校行事だ。入学してからの6年を経てよくぞこれだけ立派に成長してくれたと、卒業生担任のみならず、教職員全員が喜びと安堵の気持ちに包まれる。本日も、改めてそんな思いに満ちあふれてくる素晴らしい6年生の姿を見せてもらうことができた。マスクをばすして堂々と入場する姿、感謝の言葉とともに証書を受け取る姿、心をこめて呼びかける姿。式が進み、合唱「変わらないもの」を歌う頃には、その姿も涙でかすんでしまった。

※学校長式辞(抜粋)
皆さんが生きていくこれからの社会は、今から予測することが極めて困難なほど、めまぐるしく変化していく社会になると言われています。既に、人工知能・AIの技術も著しく進歩してきましたね。例えば、画面上に質問を打ち込むだけで、まるで人間が書いたような自然な文章を即座に回答してくれる対話型AIも登場しています。今後、AIはさらに身近な存在となり人々の働き方が大きく変わることは確かです。今日は、そんな社会を生きていく皆さんに心がけほしいことを二つだけお話します。

ひとつは、何事も自分の事として考える習慣を身につけてほしいということです。変化の激しい世の中に対応するためには、誰かがやってくれるだろうという受け身ではなく、自分で考え自分で判断することが極めて重要です。以前はそうだったかもしれないけれど、今、自分はこのような理由からこのように考えているんだと、自信をもって表現できるよう、ひとつひとつの課題を他人事にせず自分の頭でしっかりと考えてほしいと願っています。

もうひとつは、他の人と協働する心を持ち続けてほしいということです。協力の「協」と、労働の「働」という字で協働。この先、皆さんはいろいろな考えをもった人々と出会うことでしょう。その際、自分の考えを明確に表現しながらも、対話や議論を通して相手の考えを理解したり、自分の考えを広げ・深めたりしながら、互いに助け合って目的を達成しようとする思いをもってほしいのです。

AIは、存在する大量のデータをもとにする仕事や正解が決まっている仕事を得意とします。しかし、私たちが生きている社会は常に正解のない課題に溢れています。皆さん一人一人が自分事として課題に向き合い、協働して解決するための行動をとれば、きっと未来は輝かしいものとなることでしょう。未来を決めるのは人間です。AIではありません。卒業生の皆さんも、わずか6年後には成人を迎えています。4月からの中学校生活も含め、こうした思いを胸に、より一層成長してくれることを願うとともに、皆さんの活躍を応援し続けています。

【学校長コラム】 SDGs宣言

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校舎を取り囲む桜のつぼみが、日に日に大きくなっている。学校が淡いピンク色に染まる日も近そうだ。17日(金)の卒業式、24日(金)の修了式を控える中、子どもたちは、今、まさに学校生活の総まとめに取り組んでいるところである。

本校では、思考力・表現力の育成を重視する中、子どもたちが学習課題を自分事として捉え、考え、行動できるようにするため、今年度はSDGsの視点を取り入れた授業を推進してきた。9日(木)、学習の集大成としての横断幕を校舎に掲げる「取手西小SDGs宣言」を行った。この横断幕には、SDGsのロゴとともに5年生が考えたキャッチフレーズ「私たちでもこの未来・地球を変えられる!」が印刷されている。日々この言葉を目にすることで、子どもたちはきっと地球の課題を自分事として捉え、何をすべきかを考えてくれることだろう。催しの中、私からは次のような話をさせてもらった、
 
みなさん、こんにちは。ポカポカの陽気のとてもいい天気。こんな日は何だかいつも以上に幸せな気持ちになりますね。こうした幸せな気持ちをこの地球上に住む誰もが感じられたらいいのだけれど、今この世界ではこれまでにないほどたくさんの問題が起きています。

例えば、食べ物の問題。雨が降らない、あるいは雨が降りすぎるといった自然災害や戦争などによって、世界中には8億人もの人が食糧不足に苦しんでいるそうです。一方、この日本では、まだ食べられる食料をたくさん捨てている食品ロスが問題になっていますね。

このこと以外にも、世界の問題はたくさんあります。このままでは人々が安心してこの地球で生活し続けることが難しくなってしまうことを心配した世界の国々が話し合って、持続可能でよりよい世界を目指すために立てた17の目標、それがSDGs。世界のみんなが一緒にがんばっていこうという目標です。

大切なことは、「誰かがやってくれるだろう。」と、人ごとにしないこと。一人一人が、自分のこととして何ができるかを考え、行動することが必要です。今日、みんなで掲げた取手西小SDGs宣言「わたしたちでもこの未来・地球を変えられる!」は、まさにそのことをみんなに教えてくれる素晴らしいキャッチフレーズですね。考えてくれた5年生、どうもありがとう。

今回、4年生以上のみなさんにキャッチフレーズを考え、応募してもらいました。ひとつひとつを見せてもらいましたが、どれも素晴らしいキャッチフレーズでしたよ。まさに、SDGsを自分のこととして考えていることが伝わってきました。応募してくれて本当にありがとう。

さて、今日は4月から最上級生になる5年生からの感謝と決意、来週の金曜日に卒業していく6年生から在校生へのエールとしてのソーラン節が披露されました。どちらも本当に素晴らしかった。ありがとう。

SDGsに向けて行動することは、この取手西小をもっともっと素敵な学校にすることにもつながります。これからも、みんなで「笑顔あふれる取手西小学校」をめざしていきましょう。

【学校長コラム】 小中連携教育

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先日、市内の児童生徒が学習の成果を発表する「取手市小中学生プレゼンテーションフォーラム」が、ウェルネスプラザで開かれた。20校の子どもたちそれぞれが、総合的な学習の時間などに学習したテーマについて「自分の考えを伝える」ことがねらいの催しだ。

本校からも5年生の1グループ・3人が代表として参加し、「私たちのSDGs宣言・住み続けられる街づくり」について、「私たちでもこの日本を変えることができます。」との熱い思いを聴衆に訴えかけてきた。誰もが住み続けたいと思える街の要件のひとつは「安心・安全な環境」であり、特に人口減少が進む地方都市においては活性化へのヒントにもなること。また、ゴミ拾いなどの地域行事に参加することは、小学生にもできる取り組みであることなどを、ジェスチャーを交えながら、しかも「原稿なし」で実に堂々と発表していた。本校では、思考力・表現力の育成を重視した指導をおこなっているが、こうした場面においても子どもたちの成長を実感できたことは、うれしい限りである。

さて、今回のフォーラムにおいて取手西小・白山小・寺原小・取手二中の児童生徒は、各校ともに「私たちのSDGs宣言」をテーマとするプレゼンテーションをおこなった。これは今年度の二中学区小中連携教育における交流実践を、このフォーラムと関連付けて取り組んできたことによるものだ。これまでも吹奏楽部や空手部の生徒が小学校を訪問するといった交流機会はあったものの、意見を交換するような取り組みまでには至っていなかった。そこで今年度は、交流をより充実させ、4校共通の課題である思考力・表現力の育成を主なねらいとする「SDGsに関する二中学区プレゼンテーションフォーラム」と「情報モラルに関する二中学区パネルディスカッション」をそれぞれ11月と1月に開催した。

二中学区プレゼンテーションフォーラムでは、各校の小学校5年生・中学校2年生の代表者による「私たちのSDGs宣言」に関する発表後、その内容に関する活発な質疑応答がおこなわれた。常々、プレゼンの上達には場数が大切と考えているが、同じメンバーで市全体のプレゼンテーションフォーラムに参加できたことは、子どもたちが自信をもって発表に臨めることにも繋がったことと思う。

また、二中学区パネルディスカッションでは、小学校6年生・中学校1年生の代表者たちが、ネット社会と上手に付き合うための方法や留意点等について、各校での話し合いをもとにしながら発表や協議をおこなった。「情報モラルについては、自分たちがこうしていくべき。」といった活発な意見交換の様子を見ていると、課題を自分事として捉えさせた上で互いに考えられる場を設定すれば、子どもたちは主体的に自己決定していくということを再認識することができた取り組みであった。

二中学区小中連携教育の目標は、「中学校で自信をもって生き生きと活動できる力の育成」。
今回のような、子ども同士の思いや考えを結びつけるといった創意工夫ある取り組みの積み重ねとともに、日々の授業を「教師主導の学び」から「児童生徒主体の学び」へと変革していくことこそが、子どもの主体的な行動を促し、自信をもって生き生きと活動できる力の育成に繋がっていくものと信じている。

【学校長コラム】 持久走

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厳しい寒さが続く中、校門近くの紅梅が一輪また一輪と咲き始めた。早いもので、今週末に迎える立春後の授業日数は33日間。3月17日が卒業式の6年生に至っては、わずか29日間となる。子どもたちには一日一日を大切に生活し、学習の総まとめはもとより、学年末の学級活動や学校行事などを通して心に残るたくさんの思い出を作ってほしいと願っている。

昨日の1月31日は、校内持久走大会が開かれた。先週24日に予定していたものの、グランドコンディションが整わずに延期となっていた学校行事である。本校は緑豊かな環境に恵まれているとはいえ、台地に谷が入り込むこの地域独特の地形である「谷津」に立地していることもあって水はけが良くない。特に冬場は斜面林の陰となる時間が長く、わずかな降雨・降雪があっただけでも、しばらくの間はグランドを使用することができなくなる。そのため今年度の持久走コースも、日当たりが良く土の乾きが早い場所、本部から走っている子どもたち全てを掌握できる場所であることを考慮した上で設定したところである。

持久走大会の実施にあたっては、昨年12月から体育の授業や業間マラソン等を通して走る機会を増やすとともに、各担任から「持久走は自分との競争。自分の目標に向かって努力することが大切。」といったことを話し、走ることを不得意とする子どもの意欲を高めたり、単純な順位競争になったりしないよう留意して指導をおこなった。また、統計上、小学校体育における突然死等の重大事故が水泳及び陸上競技において発生することの多いことから、AEDの取り扱いなどに関する職員の救急救命研修も改めて実施した。

そもそも現行の小学校学習指導要領において持久走は、多様な動きをつくる運動である「体つくり運動」の領域に位置づけられており、仲間と速さや高さ・距離を競い合う「陸上運動系」とは区別されている。またその指導法についても、5・6学年では「無理のない速さで5〜6分程度の持久走をすること」と、一定距離のタイムを競うマラソンとは目的が違うことが明示されているところでもある。

公立校の教育計画はこの学習指導要領に基づいて実施するものであり、その改訂とともに不断の見直しが求められる。本校においても、現在の「決まった距離をどれくらいの時間で走れるか」から「決まった時間に何mを走れるか」の方式への見直しを来年度から実現するため、その実施方法に関する検討を進めている。もちろん走ることが好きで、持久走大会のタイムや順位を目標としている子どもも少なくないことから、こうした子どもの意欲を大切にしていくための工夫も考えていくつもりだ。

もっとも走ることへの興味が高い子どもには、取手市新春マラソン大会等への参加を呼びかけたい。市内には足の速い子どもがたくさんいる。他校の子どもと競える場を紹介することで、より広い世界で自らの走力を高めようとする意欲の向上にも期待するところだ。

【学校長コラム】 新年を迎えて

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新年おめでとうございます。昨年中は,本校の教育活動に対して多大なるご協力をいただきまして誠にありがとございました。一人一人の子どもたちがウサギのように大きく飛躍できるよう,2023年も未来を担う子ども達に必要な資質・能力の育成に向け,職員一同,創意・工夫ある教育活動を展開してまいります。引き続き,ご理解とご協力をいただけますよう,どうぞよろしくお願いいたします。冬休み明けの本日は,オンライン集会を開いて子どもたちに次のような講話をいたしました。

【オンライン集会学校長講話】
新年,おめでとうございます。みなさんにとって,どうぞ良い年でありますように。冬休みを終えて,また,こうして皆さんと会うことができてとてもうれしいです。今朝,久しぶりに会ったみなさん一人一人の顔から,冬休みを元気に過ごせたこと,たくさんの思い出をつくれたことが伝わってきます。みんなが元気で本当に良かった。

さて,みなさんは今年をこんな年にしたい,という目標をたてましたか。実は校長先生も,お正月におもちを食べながら,こんな年にしたいという目標をいくつかたててみましたよ。そのひとつが,11月に開かれる大きなマラソン大会で,42kmを完走することです。ただ,いきなりそんなに長い距離を走れるわけはないから,少しずつ少しずつ目標を高くして,走る距離を伸ばそうと考えています。まずは,来週の日曜日,取手市新春健康マラソン大会では5.5kmを走ってみます。取手西小からも参加する人がいますよね。ぜひ,一緒にがんばりましょうね。

最後まで走れるようにするため,冬休み中も近くの公園を走って練習をがんばりました。その時,走りながら考えたことが色々とあります。実はマラソンって,他の人との競争ではなく自分との競争なんですよね。例えば昨日は公園の池の周り1周1kmを6分で走れていたのに,次の日には7分もかかってしまうことがあるんです。また,最初の1周は6分で走れていたのに,疲れてくる2周め3周目にはどんどんタイムが遅くなってしまう。

それから,苦しくなってくると顔が下を向いてくるようになるんですね。気がつくと,すぐ足下の地面ばかり見るようになってしまうことにも気がつきました。そんな時,校長先生は「こんなことじゃだめだ」と歯を食いしばりながら,顔を上げて先の方の景色を見るようにがんばってみました。先の方にある電信柱,もっと先の方にある公園のベンチ,次はあそこまでがんばろう,その次はあそこまでがんばろうとしているうちに,いつのまにか少しずつ少しずつゴールに近づいていくんですね。今月の24日には,校内持久走大会が開かれます。どうかな,他の人との競争だけではなく,自分との競争にチャレンジしてみませんか。そして,苦しくなったときにこそ顔を上げて,先の方の景色を見てみませんか。

実は,この先の景色を見ると言うことは,マラソンに限ったことだけではないのです。みなさんがいろいろな目標をたてる時には,明日や来週といったすぐそこにある目標だけでなく,1年後,10年後の先の景色を想像しながら目標を考えられるといいいですよね。例えば,昨日は成人の日でした。大人の仲間入りをする成人って何歳だか知っていますか。そう,18歳です。6年生の多くは今12歳。大人になる18歳まではたった6年なんです。6年後,自分が何をしているのか,何を目指すのか,そのためには,今,何を努力すべきなのか。先の景色を想像することで,今すべきことが少しずつ分かってくるのかもしれませんね。

さて,話は全く変わりますが,新年早々,とってもうれしいニュースをお知らせします。実は保健室の野村先生のおなかの中で今,赤ちゃんがすくすくと育っています。取手西小のみなさん一人一人も,お母さんのおなかの中から産まれてきました。野村先生のおなかの中にいる新しい命の誕生をみんなで喜びたいですね。ただ,元気な赤ちゃんを産むため,また,産まれた赤ちゃんを大切に育てていくためには,しばらくの間,お仕事をお休みする必要があります。野村先生も,3週間後の1月27日金曜日からしばらくの間,学校をお休みすることになります。野村先生に会えなくなってしまうのは寂しいけれど,元気な赤ちゃんのため,みんなで応援しましょうね。野村先生の替わりとなる保健室の先生は前の日の1月26日木曜日から取手西小にいらっしゃいます。また,改めて紹介しますね。校長先生からの話は以上です。それでは,素晴らしい2023年にしていきましょう。

【学校長コラム】 新しい景色

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サッカー・ワールドカップカタール大会が閉幕した。日頃はJリーグよりプロ野球の結果を気にするような私でも、歓喜する人々やスタンドに揺れる色とりどりの国旗の映像等を連日のように目にすれば、おのずと気持ちも高ぶるもの。結局、日本戦に至っては深夜・早朝にもかかわらずテレビの前に釘付けとなってしまった。

大会結果は周知のとおりだが、私はメディアなどが頻繁に用いた「新しい景色」という言葉に様々なことを考えさせられた。森保監督も取材に対し、「ベスト16の壁を破れず、新しい景色を見ることはできなかったと言われるかもしれないが、ドイツやスペインというワールドカップで優勝した経験があるチームにも勝てるという新しい景色を見せてくれた。」と、この言葉を用いて日本サッカーの前進を強調していた。

教育に関連づけるなら、子どもたちがそれぞれの新しい景色を見られるよう、その環境を整えることは大人の重要な役割だと考える。一人一人の年齢によっても、それまでの経験によっても見せようとする景色は違うとはいえ、少なくとも次のステップに一歩踏み出す勇気を抱かせるのは、親であり教師である場合が多い。これまでに出会った多くの子どもたちを思い返してみても、小さなことであってもその成長を認められてきた子、たとえ失敗しても励まされてきた子は、いつでも戻れる場所があるとの安心感を抱いているためか、新しい景色を見るための挑戦を自ら続けていたように思う。

本校で重視する思考力・表現力の育成についても、発達の段階に応じて何を考えさせるのか、誰に、どんな方法で表現させるのかを教師が工夫することは、子どもたちが新しい景色を見られるようにする環境づくりに他ならない。身近な生活圏の課題からSDGsなど世界的課題への発展、教室内の同級生への発表から市内、県内他校児童生徒への発表の経験などを通して、子どもたちはそれまで知らなかった世界へとその関わりを広げていく。

先日、小中高生の調査研究に助成する「第25回げんでん科学技術振興事業」において、本校が小学校の部で大賞を受賞した。本校には給食で出た生ゴミを堆肥化する処理機があり、理科の授業で堆肥を使って植物を栽培・観察するという教育計画やその実践が認められたもの。県庁で開かれた表彰式には4年生の代表児童が出席し、学習成果のプレゼンテーションを行った。県教育長をはじめとした関係者の大人たち、中学校・高校の部のお兄さんやお姉さんたちなどを前にして、実に堂々とした発表を披露することができた。新しい景色を見た子どもたち。これからもその歩みを進め、さらに広い世界へと羽ばたいてほしいと願うとともに、少しでも多くの子どもがこうした経験をできるよう引き続きその環境を整えていきたい。

もちろん、スポーツを通して見えてくる新しい景色もある。先日、担任を通して取手市新春マラソン大会への参加を呼びかけた。市内には足の速い子どもがたくさんいる。校内持久走大会の在り方を検討する中、興味のある子どもには他校の子どもと競える場を紹介することで、より広い世界で自らの走力を高めようとする意欲を向上させてくれることに期待しているところだ。実は、子どもたちに一歩踏み出す勇気を抱いてもらうため「校長先生も参加する」と宣言してしまった。年末年始の不摂生だけが完走への不安材料だ。

【学校長コラム】 危機管理マニュアル

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二十四節気の「大雪」を過ぎ、次第に寒さが厳しくなってきたとはいえ、子どもたちはとても元気。今日の業間休みも、サッカーや鬼ごっこに興じるなど、頬を真っ赤にしながら走り回る子どもたちを校庭のあちらこちらで見かけた。そんな姿を眺めていると、こうした平穏な日々がいつまでも続くことを願うとともに、仮に危機が迫った際、この子たちを守り抜くことに対する責任の重さとその決意を強く抱くことになる。

地震や竜巻、集中豪雨といった天災にとどまらず、不審者侵入や伝染病発生など、学校管理下において想定される危機は少なくない。当然、どんな危機が発生したとしても最優先すべきは子どもの生命・安全の確保であり、そのためには保護者や地域の皆様、関係機関との連携も含め、学校全体としての組織的な対応が必須となる。もちろん緊急の場面では個々の教師がその場において最も適切と考えられる措置を迅速に執ることとなるが、日頃から危機管理の基本原則を共通理解した上で身につけておかなければ、そうした対応も難しくなる。

その共通理解に欠かせないものが危機管理マニュアルであり、本校においても危機対応の場面毎に分類した50数ページにわたる資料を整備している。教職員はこの資料を常に手の届くところに置くとともに、機会ある毎に目を通したり、定期的な研修を行ったりして緊急の場面に備えている。一方、マニュアル自体を常に見直し、改善を図っていくことも欠かせない。実際、今年度も既に水害発生時の対応やバス利用時の人数確認方法などの修正を加え、バージョンアップを重ねている。

先日は、(株)社会安全研究所の首藤由紀所長に来校していただいた。本校の危機管理マニュアルを第三者の視点から点検していただき、見直しや改善に向けた指導・助言を受けるためである。首藤氏は、国の事故調査委員や多数の児童が津波の犠牲となった石巻市立大川小学校の事故検証委員会事務局等を務められるともに、文科省発行の「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」の執筆にも携わられた防災対策の専門家。事前送付した本校のマニュアルについても、場面毎に懇切丁寧なアドバイスを頂戴した。今すぐできることから始めるため、早速、教頭を中心に改善作業に取りかかっているところである。

当日は、本校職員や市内小中学校管理職を対象とした講演会も開催した。大阪教育大学附属池田小学校児童殺傷事件、大川小学校津波被災事故における教職員の対応等を時系列で振り返り、悲しい事件・事故を二度と繰り返さないためにはどうすべきなのかを私たちに熱く語りかけていただいた。犯行直前に職員が犯人とすれ違っていた池田小、震災2日前の地震の折に津波対策が話題となっていた大川小。いずれも事件・事故を防ぐチャンスがあったことを、私たちは教訓として深く胸に刻む必要があることを痛感させられる講演であった。

関東地方は明日も晴天の予報。澄み渡った青空のもと、休み時間の校庭は子どもたちの笑顔にあふれることだろう。そうした場面においても、私たちは「危なくないかな?」「大丈夫かな?」と考え続けながら子どもを見守ることのできる教職員であり続けたい。

【学校長コラム】地域への愛着

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暑い季節,子どもたちが涼む日陰を作り出してくれたアメリカカエデ。目を楽しませてくれた色鮮やかな紅葉を経て,いよいよ落葉の時期を迎えている。今朝の校舎前は,まるで赤い絨毯が敷き詰められているようだった。大人になり小学生時代を懐かしむ頃,本校に通った子どもたちは,きっとこの景色を思い出すことだろう。

子どもたちには,学校も含め,自分が暮らす地域に親しみや愛着をもってほしいと願っている。人口減少・超高齢社会を迎える中,防災活動をはじめとした地域の様々な課題を解決していくためには,地域に誇りをもち,互いに協力しながら地域の未来を創りだしていこうとする人材が不可欠。子どもたちは,その未来の担い手であることに他ならない。

こうした心情を養うため,低学年の生活科では地域の環境を教材とした学習を行っている。地域の場所やそこで生活したり働いたりする人々について調べ考えさせることで,地域の中で生きる自分自身に気づかせたいという思いもある。先日は,2年生がキヤノン取手事業所を訪問した。世界に誇る精密機器メーカーが本校学区内に存在しながら,これまでは子どもたちが所内を見学する機会には恵まれなかった。しかし,今回,セキュリティーや安全確保,コロナ禍等の課題が山積する中にも関わらず,全面的な協力をいただき見学を実現することができた。子どもたちの成長を願う2学年担任の熱意も,きっと会社に伝わったのかもしれない。社員の皆様には緻密な事前調整はもとより,見学の際,多くの方にご対応いただけたことに対し,感謝の気持ちで一杯である。

当日は,ロボットが動く組立工場だけでなく,食堂や売店なども見学することができた。きっと子どもたちは,工場で作られている製品だけでなく,工場内で働いている人々の生活に対しても興味をもったことだろう。実は事前に会社へ送付した子どもたちからの疑問に,「警備員さんは何人いるのですか。」「警備員さんはどんな仕事をしているのですか。」という質問があった。子どもたちが登下校時に出会うキヤノンの方は正門に立っている警備員さんであり,工場内で働く人々にまで思いが至らないのは当然のこと。今回の見学を通して子どもたちの視野が広がったことは間違いない。また,持参した写真を鮮明なA3サイズに拡大してもらえた経験は,身近な企業の技術力の高さを誇りに思う気持ちにも繋がったことだろう。

地域に対する親しみや愛着,さらには誇りといった心情の醸成において,学校の授業では子どもたちの生活圏の広がりとともに学習対象を市,県,国と発展させていく。4年生の県庁見学や笠間焼き体験,6年生の鎌倉への修学旅行なども,実施にあたってはこうした目的を大切にしているところである。

先週末,修学旅行を引率した。車窓から見た東京都心の光景への驚き,富士山と湘南の海の美しさへの感動など,旅先で得た思いは人それぞれであったろうが,無事に帰宅した際,やっぱり家が一番,取手が一番と感じた子どもは少なくないはずだ。

【学校長コラム】 自分事として考える

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成長と共に学力が向上する,いわゆる後伸びする子どもに共通する特徴はあるか,と問われることがある。読書好きな子,宿題を忘れない子,素直な子など,人によってその答えは様々であろうが,私は,自分事として考える習慣のある子は学年を経る毎に伸びていくという思いを経験上もっている。これまで多くの子どもたちと出会ってきたが,学校生活それぞれの場面で,私はこう考える,私はこう思うといった自分の考えをもった上で行動していた子どもは,大人から指示されるから勉強する訳ではなく,自分にとって必要だから勉強していたという印象があるからだ。

もちろん,その考えを堂々と発表できる子どもがいれば,人前での発表は苦手だけれどもノートには自分の考えがしっかりと書かれている子どももいた。他の人に対する表現は,本当に人に伝えたい内容ができれば,その方法を工夫することは必然で,そのために必要な力は年を重ねる毎にきっと高まっていくものだろう。

しかし,自分事として考える習慣は,進学すればあるいは就職すればおのずと身についていくものだろうか。考えることとは心の内面に関わることであり,考えていようが考えていまいが,一時間一時間の授業,一日一日の生活は間違いなく過ぎていく。私は,小学校時代を含めた幼い時にこそ,こうした習慣を身につけてほしいと願っている。

そのために必要な方法のひとつは,大人が子どもに問うことだろう。学校はもちろん家庭においても,大人が指示・管理する場面をできるだけ減らし,「君はどう考えるの?」「なぜそのように考えるの?」と問いかければ,必ずその子なりの答えは返ってくる。例えば,なぜスマホが必要なのか,親の心配に対してどのような約束事を作るのかなど,問える場面は数多く存在し,そのたびに子どもは自分事として考える習慣を身につけていくに違いない。

今年度本校では,各学年の学習内容をSDGsの視点と関連付けて再構築している。「持続可能な世界を築くためには,何をしたらいいだろう?」,「SDGsの達成のために,自分はどんなことができるだろう?」など,世界共通の様々な社会課題に触れ,考え,行動してほしいからだ。達成目標の2030年は間近であり,未来をより良くするためには,その方法をまさに自分事として考える必要があることを,これからも子どもたちには問い続けていきたい。

今日の昼休み,6年生の代表者4人が,修学旅行グループ行動中の飲食を許可してもらうことを目的に校長室にやってくる。飲食に伴う感染を心配する私に対し,自分たちで決めたルールや感染防止策を説明したいとのことである。私からの問いかけに対するQAも用意してあるらしい。子どもたちとの協議の場が今から楽しみだ。

子どもたちの自分事として考える習慣は,着実に向上している。

【学校長コラム】 秋祭

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♪ アメリカ楓 燃える赤 色鮮やかに僕らの窓飾る 
  実り豊かな稲(いな)のよう 日々すくすくと夢育ち 
  ああ 取手西小学校 共に流した汗涙 きっと忘れない西の空 ♪ 

校歌にも歌わている校舎前のアメリカ楓。色付きはじめの早かった北西側の木々が,今まさに燃えるような赤に輝いている。今日の昼休み,子どもたちはアメリカ楓の落ち葉を集めたり,高く投げ上げ風に飛ばしたりと,秋を存分に楽しんでいるようであった。

この季節,各地では秋祭が行われている。全国から観光客が集まるような祭もあれば,地域の氏神様の祭もあるだろう。私の小学校時代には,市内の神社の祭礼当日,学校が休みになった。威勢の良いお神輿の巡行,徐々に近づいてくる賑やかなお囃子,ずらりと並んだ屋台の数々,おどろおどろしい見世物小屋。祭の目的を考えることもなく,小遣いを握りしめて友だちと一緒に神社へ向かったものである。祭の日が近づくにつれて感じたワクワクとした気持ちは,50年を経た今でも思い出すことがある。

秋祭は,もとより農耕の収穫を感謝する祭。ここ数年はコロナ禍により開催中止や規模縮小を余儀なくされた祭も多かったが,今年に関しては,感染症拡大防止策を徹底するなど様々な工夫をこらしながら開催を実現している祭が増えているとも聞く。年に一度の風物詩。皆で知恵を絞りながら笛や太鼓のお囃子を街中に響かせてほしいものである。

本校でも29日の土曜日に「にしっこまつり」を実施する。多くの子どもたちが楽しみにしているこの催しも,密を避ける工夫をした上で実に3年ぶりの開催となる。午前中は各学年の学習発表会を保護者やスクールガードの方にご覧いただき,午後からはPTA主催による出し物ブースで子どもたちが祭を楽しむ予定となっている。本部役員,文化委員をはじめ保護者の皆様には,お忙しい中,スーパーボールすくいや巨大積み木,ボウリングに輪投げなど,子どもたちの笑顔が目に浮かぶような出し物を準備していただき,感謝の気持ちでいっぱいである。今から心をワクワクさせ,50円玉3枚10円玉3枚のお小遣いをお財布に準備している子どもがたくさんいることだろう。

学習発表会の準備にあたっては,子どもたちの「感謝する心」を醸成したいと,各学年の担任がそれぞれに指導をおこなっている。日々,愛情を注ぎ育ててくれる家族への感謝,登下校の安全を見守ってくれるスクールガードの方への感謝など,自分は周囲の人々に支えられながら生活していることに気づかせ,考えさせ,一人一人がそれぞれの「感謝する心」を持ち続けてほしいと願っている。

人に対する感謝の秋祭。きっと心温まる素晴らしい一日になることだろう。

【学校長コラム】竹のように

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澄み切った青空のもと,昼休みの校庭には縦割り班活動を楽しむ元気な声が響いている。日中は暑くも寒くもなく過ごしやすい気候だが,今朝の関東地方は最低気温を更新したとのこと。登校の際,子どもたちも秋の深まりを感じていることだろう。

2学期の始業式から10日が過ぎた。この間,さしま少年自然の家での5年生宿泊学習,水戸・笠間での4年生校外学習を無事に実施できたところである。もちろん,快適な気候のもと,日々の授業も順調に教育計画が進行している。

始業式といえば,このところ2学期制を導入する学校が増えてきた。授業時数の確保,ゆとりある教育活動の展開などをねらいとした制度改革ではあるが,始業式の校長式辞において子どもたちに節目を意識させるためにはそれなりの工夫が必要となる。3学期制であれば,夏休み後の2学期,お正月後の3学期など季節や風習などとの関連づけもし易いが,10月中旬となるとそこがなかなか難しい。12日に行われた始業式,私は校舎裏に生えていた篠竹を手に,次のような話をしてみた。

(前略)始業式はひとつの節目です。節って何だかわかりますか。例えば,この竹を見てください。七夕飾りなどにも使う竹です。ぽこりぽこりとふくれて見える部分,このひとつひとつを節といいます。

実は校長先生,この竹という植物が大好きです。竹は,空に向かってまっすぐに伸びていきます。竹は,強い風が吹いても大きくしなりポキリと折れることはありません。竹は,地下でがっちりと根と根を絡ませ,お互いに支え合っています。竹の林があるお家は地震に強いとも言われていますね。

校長先生が竹を好きな理由。それは,竹の成長が,まるでみなさんが素直にまっすぐ育っていく姿,社会の変化にしなやかに対応していく姿,困ったことがあってもお互いに協力し,支え合っている姿にも見えるからなのです。こうした竹の強さの秘密が,実は,ひとつひとつの節にあるそうです。節があるからこそ,竹はポキリと折れない強さをもっているんですね。

竹の強さの秘密が節にあるように,皆さんの生活にも節目が必要です。一年一年の節目,一学期一学期の節目を大切にすることで皆さんはより良く成長します。2学期を迎えた今日はまさに節目です。こんな2学期にしたいという目標をしっかりとたて,その目標に向けて一生懸命努力してください。先生達は,みなさんの努力を全力で応援しますからね。(後略)

始業式後の笠間市内,バスを降りて窯元へと歩く道すがら,「校長先生が言っていた竹だ!」と竹林に向かって声を上げる4年生の子どもたち。これからも,素直にまっすぐ育ってほしいと願っている。

【学校長コラム】宿泊学習

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赤く燃え上がるキャンプファイヤーを囲んで踊った「オクラホマミキサー」。徐々に小さくなる炎を見ながら歌った「遠き山に陽は落ちて」。翌日は初めての飯ごう炊さん。白米というよりも茶色いお焦げ米だった。

宿泊学習に係る私自身の記憶である。50年近く前のことにも関わらず,今でも何となく覚えている数少ない小学校時代の思い出のひとつ。私に限らず,こうした平素とは異なる生活環境下での出来事は,日常のことよりも記憶に残り続けるのかもしれない。

小学校で宿泊学習を実施するねらいのひとつは,自然に親しむこと。全国学力学習状況調査でも,「自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがある児童・生徒ほど,平均正答率が高い傾向にある」との結果が示されている。自然の中で遊ぶことは,子どもたちの様々な好奇心を刺激し,理科など関連する教科への学習意欲が高まるのかもしれない。

宿泊学習実施のもうひとつのねらいは,よりよい人間関係を作り上げようとする態度を養うこと。私たちの社会生活では,個人の思いだけを押し通すことは極めて難しく,互いのことをより深く理解した上で,折り合いをつけるなどして諸問題を解決していくことが必要となる。もちろん日々の学校生活でもそうした場面は数多く存在するが,寝食を共にする中でしか起こりえないこともある。少子化の時代だからこそ,学校行事としての宿泊経験を一層充実させる必要があると考えている。しかし,果たして1泊2日程度の日程でこのねらいに迫れるものなのか,人間関係形成をより重視するのであれば活動プログラムはどう在るべきなのかなど,検討すべきことも多い。

現状では宿泊場所や活動内容を検討するにあたり,自然体験の減少といった子どもたちを取り巻く状況の変化を踏まえて協議,決定することが多い。本校も豊かな自然環境,自然体験プログラムの豊富さ,移動距離等を勘案して「さしま少年自然の家(境町)※」を利用しているが,県立施設ということで宿泊費が安価なことも魅力のひとつではある。

一方で,全国的には日程を2泊3日に伸ばしたり,活動内容を変更してホテルへの宿泊に切り替えたりする学校も徐々に増えている。学習指導要領においても,「農林水産業に関わる体験活動等その地域の特色や産業等に対する理解を深める活動を取り入れることも望ましい。」「児童の発達の段階を考慮しつつ,一定期間(例えば1週間(5日間)程度)にわたって行うことが望まれる。」と示されているとおり,「宿泊学習は少年自然の家で1泊2日」といった私たちの既成概念すら変えていく必要があるのかもしれない。

昨日,5年生が宿泊学習から帰校した。2人の担任が子どもたち自身がつくりあげる宿泊学習をめざして入念に指導や準備をすすめてきたこともあり,自然の家では極めて主体的な活動が展開されたとのこと。キャンプファイヤーを囲んで踊ったのは,「オクラホマミキサー」ではなく「ジンギスカン」だったそうだが,友だちと一緒に盛り上がった思い出は何年たっても子どもたちの心に残り続けることだろう。

※正式名称は「ばんどう太郎 さしま少年自然の家」

【学校長コラム】企業の社会貢献と教育

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十数年前,当時取手市教委に勤務していた私は,子ども達のサイエンスへの興味・関心を高めることを目的とした理科実験教室を企画し,医学博士の製薬会社研究員とともに各小学校を訪問して5学年理科「もののとけかた」の実験指導を行った。その際,研究員から「薬作りも,皆さんが今,理科で勉強していることの延長なんだよ。」という話を聞いた子ども達の目がキラキラと輝いていたことをよく覚えている。もちろん,白衣を身にまとった博士が教室にやってくるという場面そのものが,理科好きの子どものワクワク感を高めたのかもしれない。

誕生日やクリスマス,家庭内で子ども達が非日常的なイベントを喜ぶように,学校が外部講師を招いて実施するスペシャルな授業は,学習内容への子ども達の興味・関心が高まるなど,その教育効果は極めて高い。特に,企業等が社会貢献として実施する教育プログラムは,マーケティング目的ではないにもかかわらず人と予算をかけて行われることが多く,本校としても積極的に活用させていただきたいと考えている。

最近では9月30日にセコム安全教室を開催し,2年生が安全・防犯のプロであるセコム作成の教材を使用して,知らない人から声をかけられた際の対処法などを学んだ。当日は,子どもたちを取り巻く現状や具体的な対策などの保護者向け情報を「子どもの安全ブログ」として発信していらっしゃるセコムIS研究所の方,本校スクールガードの方にもご来校いただき,本校の安全教育について協議することもできたところである。

一方,こうした教育プログラムを活用する際には留意すべき点もある。そのひとつが,企業側に授業の丸投げをしないこと。子どもたち一人一人の習熟の状況や課題を熟知しているのは,紛れもなく教師である。授業とは育てたい力を明確にした上で行われるべきであり,事前打ち合わせ不足で実施した場合には,何のための授業だったかすら曖昧になりかねない。特定分野のプロである企業の方と教育のプロである教師が十分に連携した授業であれば,きっと日頃の授業とは比較にならないほどの教育効果が表れるはずである。

10月7日(金),6年生を対象にトヨタ未来スクールを開催し,ミニロボットを操作するプログラミング学習を通してSDGsの目標11「住み続けられるまちづくり」について学習する。さらには,本校からの強いリクエストにより実現した,水素を用いた燃料電池自動車MIRAIの見学を通して,SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」,目標13「気候変動に具体的な対策を」についても考える予定である。

6年生は11月の修学旅行で世界初の水素発電ホテルを見学する。こうした今後の予定や育てたい力を伝えた上で,担任はトヨタの方と念入りな打ち合わせを行ってきた。授業当日が楽しみだ。ちなみにプレゼン資料の修正については,私自身がトヨタの方と実に90分間にわたり電話協議をした。先方は多少困惑されていたかもしれないが,子どもたちのためには譲れない部分である。

※セコム 子どもの安全ブログ https://www.secom.co.jp/kodomo/

【学校長コラム】五感を通して

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先日の業間休み,「校長先生,何だか甘くていい香りがするんだよ。」と,鼻をくんくんさせながら香りの元を一生懸命に探している1年生に話しかけられた。香りの正体はわかっていたものの,私も一緒に鼻をクンクンさせながら捜索し,たどり着いたのは校門横のイチョウの裏。まるで隠れるように生えている1本の木。オレンジ色の小さな花を指さして「これだ,これだ」と喜ぶ彼女達には,その木がキンモクセイという名であることを伝えた。子ども達が香りを通して季節を感じ取れるよう,学校建設段階からこの木をあえて目立たぬ場所に植栽する学校も少なくないが,あたかも世紀の大発見をしたかのような子ども達の笑顔を見ていると,よくぞこの場所に植えてくださったとの思いが心をよぎった。

夏の暑さもすっかり和らぎ,少しずつ秋の深まりを感じるようになってきた。子ども達には,こうした気温の変化だけではなく色,音,香り,味など,自らの五感を通して季節の変化を感じとってほしいものである。子どもの感性はとても豊か。大人になると普通のこととして捉えがちなことであっても,子ども達がもつ新鮮な感覚からは様々なことが発見されていく。アメリカカエデの色付き加減,虫の音色のわずかな違い,栗のイガの痛さ,そしてキンモクセイの香りなどなど,どれもこれも休み時間に子どもから教えてもらったことである。

この季節,20年程前までは多くの学校の校庭でモクモクと煙の上がる光景が見られた。学校のお祭りなどの折りに子ども達が栽培したサツマイモを焼き,みんなで味わい,楽しんだものである。市街地での焚き火が禁止されて以降,こうした行事も実施が困難になったが,食を通して秋を感じることができるのも,この季節ならではなのかもしれない。

今週の給食でもサンマが献立にのぼり,校内放送を通して小骨への注意とともに季節の食材であることを伝えた。現代は栽培方法や保存技術が進歩し,一年中食べ物があふれているが,魚介・蔬菜(そさい)・果物などが熟して味のもっとも良い時期である「旬」の意味も,今後,子ども達には伝えていきたいと考えている。ご家庭でもスーパー等での買い物の際,お子さんと一緒に「今が旬!」の食べ物を探し,味わってみてはいかがだろうか。

【学校長コラム】安全管理と安全教育

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天候が心配ではあるが,9月25日(日)は本校を会場に地域の防災訓練が開催される予定である。レスキュー車などの真っ赤な各種消防車,さらには警察署からパトカーも来校するので,小さな子どもたちにとっては目をキラキラさせる光景になることだろう。消火訓練や心肺蘇生訓練も実施されるとのこと。広域災害発生の際には,自助・共助が重要と言われる中,災害の初期段階における自分たちの安全は自分たちで守るといった意識は,こうした訓練の中でこそ高められるのかもしれない。今年で26回めを迎えるこうした活動を継続されてきた自治会の皆様には敬意を表したい。

学校においても,教職員による「安全管理の徹底」と,児童自らが安全に行動し,他の人や社会の安全に貢献できる資質・能力を育成する「安全教育の充実」は,まさに両輪となるものである。とはいえ,「安全管理の徹底」は子どもを守り抜くためにいずれの学校においても共通した取組がおこなわれているものの,「安全教育の充実」に関しては地域の実態や課題意識の濃淡によって学校毎に違いがあることも事実である。

本校では,児童の思考力・表現力を向上させることを今年度の最重要目標として掲げ,その方法として日々の授業を「教師主導の学び」から「児童主体の学び」へと転換を図っている。それは国語・算数といった教科教育に限ることではなく,「安全教育の充実」などについても同じ。自分の安全は自分で守るといった意識を,教師の指導ではなく,児童自らが気付き,考えることを通して身につけてほしいと願っている。

7月以降,本校webページに「取手西小安全マップ2022(作成中)」があることに気づかれた方はいらっしゃるだろうか。GoogleMapを利用し,PTA校外指導委員会が収集した危険箇所の現状と要望事項,さらには対応状況を地図上で確認できるものを作成した。実はこの安全マップの総仕上げは,児童自身が収集した危険箇所を防災に係る自分の考えを含めて地図上に整理していくことにある。この場所にはこうした危険があるから自分たちはこういう行動を取る必要があると子ども自身が気づいたならば,それこそが児童主体の学びに他ならない。9月30日(金),2学年の子ども安全教室開催に併せて,6学年児童はこのマップ作りに取り組む。安全・防犯のプロであるセコムの方,本校スクールガードの方にもご来校いただき,客観的なご意見をいただくことも計画しているところである。

「取手西小安全マップ2022(作成中)」には,取手郵便局前交差点に係る危険性の現状や保護者の要望も掲載している。私から制服警察官の巡回を依頼していたところ,本日22日(木),白山交番の警察官が登校指導に協力してくださった。警察官の姿が見えたからか,ことの他本日の交通マナーはとても良く,横断歩道上で停車する車両も少なかったため,取手二中生も安心して道路を横断することができていた。派出所の方には,感謝の気持ちを伝えるとともに今後の継続的な支援をお願いしたところである。

学校にできることは限られている。学校とともに住民の皆様が子どもの安全に関する危機意識を共有し,地域の意見として関係機関への働きかけを一層推進していただれば幸いである。

【学校長コラム】安全管理

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ここ数日は秋晴れが続き,昼休みには子どもたちが元気に校庭を走り回っている。あの日もこんな青空だったなぁと,年号が昭和から平成に変わる少し前の頃の出来事をふと思い出した。

35年前のある朝,中学2年生の副担任だった私は,教室内に空席があることに気がついた。出席確認で担任教師も不在者のいることを把握したものの,少し待てば家庭から連絡があるものだろうと,特に学校からの問い合わせはしなかった。しかし,始業から2時間を過ぎても生徒は登校しない上,家庭からの連絡も一切なし。さらには,同じような状況の生徒が他のクラスにも2人いることがわかり,慌ててそれぞれの家庭に電話をしたところ,保護者の返答は一様に「いつものように家を出ています。」とのこと。急遽,授業のない教師や保護者が通学路周辺を中心に捜索したものの手がかりはなく,警察への相談も検討することになっていた。

夕方,大人たちの心配をよそに,各生徒は何食わぬ顔でそれぞれの自宅に帰ってきた。ほっと胸をなで下ろしながらも,早速どこで何をしていたのかを聞き取ったところ,多少すまなそうな顔をしながら,「天気が良かったので釣りに行ってきました。」との答え。多くの人に心配をかけた無断欠席を厳しく指導しながらも,秋の一日,学校をさぼりたくなる気持ちも理解できるなぁ,と思ったことを今でも覚えている。

一方,こちらは決してその言い訳を理解することはできない。認定こども園の送迎バスに置き去りにされた子どもが亡くなるという,大変痛ましい事案の発生である。運転手が休みだった,慌てていた・・,どんな言い訳を並べてたとしても,出席確認も含めた安全管理がずさんだったことは明白であり,国がバス送迎に係る全国緊急点検を実施することも当然のことと考える。

本校職員には,このことを決して幼児施設の事案ととらえず,本校における児童の安全管理を一層徹底するよう指示をした。本校では健康観察アプリを利用して保護者からの出欠席等の連絡を受けているが,連絡内容の共有方法,連絡のなかった家庭への電話確認手順,出欠席管理を徹底するための複数チェック体制の確認など,本校危機管理マニュアルを改めて点検したところである。また,修学旅行や校外学習などバスを利用する機会を振り返り,場面の切り替わりにおける児童の人数確認の在り方についても,その安全管理を徹底していきたいと考えている。

さて,先ほどの生徒たちは親にも内緒で釣りに行ったため,弁当などの昼食は持参していなかった。お腹が減らなかったのかを尋ねたところ,「釣った魚やザリガニを焼いて食べた。特にザリガニはとってもおいしかった。」との答え。子どもたちのたくましさを感じたことも,良く覚えている。

【学校長コラム】夏の思い出

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夏休みを終え,学校に子どもたちが戻ってきた。ここ数日,会った子どもには印象深かった夏休みの出来事を尋ねているが,花火大会が楽しかったこと,宿題に苦労したことなどなど,一人一人の夏の思い出は全く違っていて興味深い。一方,どの子と話をしていても同じように思うことは,夏休み前に比べると明らかに成長していると感じることかもしれない。低学年ほど顕著ではあるが,目線の合わせ方,説明の仕方,話の内容・・・,ほんの些細なことから,「あれっ,こんなにお兄さん・お姉さんだったかな?」と思うこともしばしばである。

私自身の一番の思い出といえば,鬼怒川源流の湿原まで苦労して登ったこと。山登りを趣味としている訳でもなく,突然思い立って往復8時間の山道を一人で歩き始めた。深山の清々しさを楽しめたのは最初の2時間のみで,その後は険しい山中を足の痛みと戦いながら黙々と歩くのみであった。とはいえ,登頂時の爽快感,思い浮かぶ様々なことを熟考する時間を得られたことなど,実に貴重な体験ができたとものと考えている。

子どもたちの夏休みは,一人での山登りに似ているかもしれない。学校では教師主導のもと,同じルートを同じペースでみんなが一緒にその日の学習目標に進んでいくことが多い。しかし,夏休みは一人一人が自分自身でその歩みを進めなければならない。どんな方法で,どんな計画で物事を進めるのか,そもそも何を目標にするのかさえ子どもによって違うはずである。より高い目標に向かって走り続ける子どももいれば,現実的な目標に向かってじっくりと歩き続ける子どもがいてもいい。夏休みは,子ども時代にしか味わうことのできないそんな貴重な経験ができる極めて有意義な時間。休み明けに成長を感じるのは,子どもたちがそんな時間を過ごしてきたからに違いない。

今年度,本校では,日々の授業を教師主導の学びから児童主体の学びへと変えることを目指している。各時間の学習目標に向かって,どんな方法でどんな計画で学ぶかを子ども自身が決定することにより,課題についてより深く思考し,自分の言葉として表現することができるものと考えているからだ。夏休み中がそうであるように,教師を含めた大人の役割は,今こそ指導から自走の支援へと変わっていく必要がある。

秋。職員室前のキバナコスモスも,鮮やかなオレンジ色の花を咲かせている。学びにも最適な季節。未来を生きる子どもたちに必要な力を,しっかりと育てていきたい。

【学校長コラム】子どもの好奇心

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5月末に種まきをした1年生のアサガオ。水やりなどの世話を欠かさず大切に育ててきたこともあり,今では青やピンクの大輪を咲かせている。毎年,個別面談で来校した保護者に自宅への持ち帰りをお願いしているため,一鉢また一鉢とアサガオが減っていく景色からも夏休みが間近であることを感じることになる。

先日の朝,水やりをしている1年生から突然の質問を受けた。「校長先生,アサガオの花にはどうして青やピンクや紫があるの?」。その子の鉢を見てみると,確かにそれぞれの色が違っている。pHの変化が色素に影響するとの話を聞いたこともあったが,1年生にpHの説明は余りにも難しい。とっさに「あなたはどうしてだと思う?」と問い返したところ,「うーん。お日様の光のせいかな。」との答え。お互いに考えたり調べたりすることを約束すると,その子どもは元気に昇降口へ走っていった。

子どもの好奇心を大切にしたい。どうしてだろう,なぜだろう,不思議だな。対象とする事物現象は一人一人異なっていても,子どもたちの頭上にはいつも?が浮かんでいる。その?を学びに繋げることこそが,教師の重要な役割と考えている。過去に遡れば,教師が己の知識を子どもに伝え,ただひたすら暗記させるといった授業もあった。しかし,予測困難で非連続かつ多様性の時代においては,努力して得た知識でさえすぐに役立たなくなることもある。そうなると,子どもたちには知識以上にその学び方を身につけさせることが極めて重要になってくる。

学び方にもいろいろある。最も簡単なのはインターネットで検索することだろう。しかし,まずは自分の頭で考え,できることなら実験や観察などを通して確かめることも大切である。時間をかけ苦労して導いた答え,あたかも自分が発見したと思えるような答えであればあるほど,かけがえのない学びとなることだろう。

そんな時間を生み出せるのも夏休み。子どもたちが抱いた好奇心を,自由研究などを通して学びに繋げるチャンスである。ぜひ,挑戦してほしいと願っている。幸いにして本校の大村教頭は,指導した子どもを文部科学大臣賞に導くなど県内でも指折りの理科自由研究指導のエキスパート。相談日も設けているのでこちらもぜひ活用していただければと思う。

さて,アサガオの色が変化する理由を調べていたところ,NHKラジオ「子ども科学電話相談」において同様の質問に応じる植物学者の回答が見つかった。安易に検索してしまった点は,大人ということで何卒ご容赦願いたい。

※NHKラジオ「子ども科学電話相談」
 https://www.nhk.or.jp/radio/kodomoqmagazine/det...

※大村教頭による自由研究相談日 7月22日,25日,26日(各日午前9時〜11時)

【学校長コラム】子どもとスマホ

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docomoレッドにauオレンジ,シルバーはSoftBank。大手キャリアそれぞれのイメージカラーもすっかりなじみ深いものとなり,スマホの新機種や5Gの魅力を伝えるテレビCMを目にしない日がなくなった。保護者やスクールガードの皆様との情報共有など,学校でもスマホや携帯はもはや欠かせない存在となっている。

今では考えられない話だが,インターネット普及以前の学校では学級毎の緊急連絡網を保護者に配布していた。各家庭の電話番号が数グルーブに分けて掲載されており,保護者の皆様には臨時休校の情報などを次々と伝言していただいた。個人情報の取り扱いに係る懸念等から,掲載する番号を次の方だけにするなどの変遷はあったものの,一斉連絡手段が存在しない時代においてはこの方法が一般的であった。とはいえ固定電話の利用である。次の方の不在により伝言が止まってしまったり,大雪での県内一斉休校連絡により地域一帯の電話が繋がらなくなってしまったりと,トラブルも頻発していた。

そんなことを思い出したのは,先日,長時間にわたる大手キャリアの通信障害が発生したからだ。スマホによるインターネット接続が日常化し,コミュニケーションツールとしてはもとより,情報収集手段などとしての情報端末はもはや生活に不可欠なものとなっている。本校でも保護者やスクールガードの皆様には配信メールシステムに登録していただたき,下校時刻の変更情報などを共有している。幸いにして今回の通信障害発生の間には緊急連絡事案がなかったものの,あの時雷雨が発生していたら,大きな地震が起きていたらと考えるだけで不安になる。携帯電話とインターネットが接続されてから20年ほどしか経過していないにも関わらず,こうした技術はいつのまにか極めて重要な社会インフラに成長した。子どもたちが生きる未来の社会においてはその技術が加速度的に進歩することは疑いようもなく,もはやスマホ等の情報端末がない暮らしは考えられない。

一方,子どもたちがインターネットを安全に利用するためには,子ども自身がその危険性や正しい利用法を理解し実践することが大切である。内閣府が実施した昨年度12月の調査によれば,10歳以上の小学生で子ども専用のスマホを所持・利用している割合は約63%,6歳から9歳の小学生でも約21%が自分専用のスマホを持ち,インターネット接続等のために利用しているとのこと。こうした現状を踏まえると,例えばSNS被害から自分を守るため,あるいは加害者とならないための教育が必須となってくる。

本校では先日,取手警察署とdocomoによるスマホ安全教室を開催した。参加した5・6年生の子どもたちは,SNS上の具体的なやりとり例を見ながら,言葉でもスタンプでも相手に真意が伝わらない場合があること,現実社会でもネット空間でも相手を思いやることが大切であることなどを真剣に学んでいた。

もちろん学校におけるこうした学習も大切だが,小学生の場合には子ども専用のスマホを買い与える際のルール作りが最も有効と考えている。子どもの多くは,自室でのSNS投稿やwebサイト閲覧を望むことだろう。中には風呂場でスマホを操作している強者がいるとの話も聞く。こうした現状からも,購入にあたって親が心配することを子どもに伝えたり,スマホの利用時間や利用場所,フィルタリングの強度を一緒に考えたりといった場を設けることで,子どもは情報社会という大海原に少しずつ少しずつ船出していくことが可能となる。スマホの利用は家族のいるリビングに限り決して自室には持ち込まない,といったルールを決めているご家庭もある。もちろんルールは固定でなく,進級時や誕生日毎に緩やかにしていく話し合いも必要となってくるだろう。家庭におけるルール作りについては,本校webページでリンクしている「SECOM 子どもの安全ブログ」でも具体的に例示されている。ぜひ,参考にしていただきたい。https://www.secom.co.jp/kodomo/m/20220203/

この先に待つ5G・6Gが日常の世界で,大人に成長した本校の子ども達はどのような暮らしをしているのだろう。私にとっては現在の4Gでさえ,「ポケベル」で妻と連絡をとりあっていた30年前に比べれば夢のような世界である。11 92 21 04 45 13

【学校長コラム】英語教育

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まぶしいほどの青空に,もくもくと沸き立つ真っ白な入道雲。例年であれば夏休みを迎える頃の光景であろうが,今年は早くも日常となっている。唯一違うのは,セミの声があまり聞こえないこと。アブラゼミやミンミンゼミの大合唱が始まれば,子どもたちの心も一気に夏休みとなるのかもしれない。

先週,アメリカから来日していた姉弟の体験入学が終了した。現地校の夏休みを利用して市内の祖父母宅を訪れていた3週間,4年生・1年生の教室でともに学習をしていた。子ども同士が少しでも早く打ち解けられるようにと,来日前から担任がアメリカと本校をインターネットで結んでの交流を行っていたこともあり,過ぎてみれば姉弟ともすっかり友だちの輪に溶け込んでいた。

海外とのオンライン交流の際,事前調整を要することのひとつが時差の問題である。今回の場合,姉弟が暮らす西海岸との時差は16時間あり,交流した日本時間午前11時は現地時間午後7時となる。担任が日本は昼間だがアメリカは夜であることを伝えた際,1年生はみんな「何で?」という様子だったが,その理由を知りたいと興味をもった子どももいたはず。こんなことからも,子どもたちの目が世界に向いてくれることには期待をしているところである。

体験入学した姉弟は,英語はもとより日本語とイタリア語を使いこなす。そんな1年生の弟が外国人ALTとよどみなく英会話をしている姿を見ていると,日本の子どもたちの英語によるコミュニケーション力を高める必要性を再認識させられた。今以上にグローバル化が進展する中においては,ビジネスや学問の場に限らず生活の場においても英語がコミュニケーション手段となっていくことが予想される。そうした未来を生きていく子どもたちに対し,今,どんな力を育成していく必要があるのかをしっかりと認識した上で,本校の英語教育をさらに充実させたいと考えている。

今,日本の英語教育は大きく変わり始めている。小学校4年生までは英語に親しむことを目的とする活動中心の授業である一方,小学校5・6年生からは正式な教科となり,「聞く」「話す(発表)」「話す(やり取り)」「読む」「書く」のコミュニケーション力の基礎の育成を目標にした授業を実施している。中学校・高校においても系統性をもってこのコミュニケーション力を高めていくことで,グローバル化に対応できる人財を育成しようというわけである。

機会を得て知り合い,せっかく仲良しになれた海外のお友だち。姉弟とは今後もオンライン交流を続けたいと考えているが,少しずつ英語でのコミュニケーションが図れることを願っている。16時間の時差,8,000km以上の距離を越え,思っていることや考えていることを伝え合えうことができたなら,英語は真のコミュニケーション手段となることだろう。

さて,アメリカの新学年が始まる夏休み明け,姉弟も5年生と2年生に進級すると思われる。子どもたちに話したならば,きっと時差同様「なんで?」という表情を見せてくれるに違いない。

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