東京都小学校体育研究会のトップページへ移動します。
各領域部会をクリックすると、別ウインドウで開きます。

令和3年度の研究

一人一人の子供が自ら深い学びを実現していく体育学習

研究主題の設定理由を受けた部会の考え方

本部会の捉える「深い学び」とは、一人一人の子供が、チームでゲームを行う中で、ゲームをより楽しむために仲間と粘り強く試行錯誤を繰り返す過程で得られるものである。子供が学習課題を見いだし、仲間とゲームや練習、話し合いなどを行う中で、自分や仲間の学びの状況を確認しながら課題を解決していくことができるように、 教師は指導と評価を工夫していく。

研究の視点1 「子供一人一人が自らの学習課題を見いだすための手立ての工夫」

ボール運動領域における学習課題の捉え方

〇ゲームを楽しむための自己の学習課題
〇型やゲームに応じた効果的な動きについての自己の学習課題
〇仲間との連携(作戦)についての自己の学習課題

研究主題に迫るための工夫

一人一人の子供が学習課題を見いだす手立ての工夫
●運動との出会い
運動(ゲーム)との出会いとなる「はじめのルール」は、「今もっている力で楽しめるゲーム」である必要がある。「もっとやってみたい」「楽しい」という関心や意欲を育むために対戦や練習の形式を工夫したり、子供がルールを理解しやすいゲームを提示したりすることが大切だと考える。
●運動の特性を味わうことができる、魅力的なゲームの開発
1チームの出場人数が3人のゴール型ゲームに取り組む。運動の特性を明確にし、子供がボールを持たないときの動きについて学習課題を設定できるようにする。
●チームと個人の学習課題のつながり、作戦の捉えについての整理
個人の学習課題からチームの作戦や課題を考えていくことが理想的であるが、チームの作戦や課題から、個人の学習課題を見つけていく子供もいる。ゲームを進める際の方向性であるチームの特徴に応じた作戦を「ボール操作/動き方/役割分担」の三つと捉えた。この三つの観点は、学習者が作戦を考えるための視点、教師が子供の学習活動を指導・評価するための指標である。

各領域部会における学習指導の工夫
●学習課題を解決する学習過程
今もっている力でゲームの楽しさを味わう段階、個人の学習課題やチームの特徴や課題について考える段階、学習課題をチームで解決していく段階がある。それぞれの段階の子供やチームに対し、教師が適切な指導と評価を行うことができるよう、手立てを設定する。
●ICTの利活用
第1時のルールを理解する場面で、子供がルールを十分に理解できるよう動画を作成した。子供自身がゲームの様子を撮影した動画を基によい動きに気付き、自分やチームの課題を見つめることができるように促していく。
●教師の個人/チームへの指導と評価の工夫
支援が必要な子供に重点的に指導を行うために、ゲームの状況から考えられる子供の学習課題を想定し、支援例を作成した。一人一人への言葉がけや、チームの状況に応じた教師の支援例を考えることで、指導と評価を一体とし、指導の個別化を図ることに加え、学習を自分のものとして主体的に課題解決(学習の個性化)が図れるようにする。

第2回実証授業について

実施学年、実施単元、実施日、実施学校、授業者等

第5学年 ボール運動「トリオハンドボール」
11月4日(木) 港区立港南小学校 世取山拓平

第2回実証授業で明らかにしたいこと

支援と作戦の捉えの具体、個人の学習課題と教師の支援との関連
トリオハンドボールの教材としての価値について
 
 
 
 

令和2年度の研究

一人一人の子供が自ら深い学びを実現していく体育学習

研究主題に対する部会の考え方

本部会の捉える「深い学び」とは、一人一人の子供が、チームでゲームを行う中で、ゲームをより楽しむために仲間と粘り強く試行錯誤を繰り返すことである。子供が学習課題を設定し仲間とゲームや練習を行う中で、自分や仲間の学びの状況を確認しながら課題を解決していくことができるように、教師は指導と評価を工夫していく。

研究の概要

ボール運動領域部会における学習課題の考え方

● ボール運動領域の特性
 ルールや作戦を工夫し、集団対集団の攻防によって仲間と力を合わせて競い合う楽しさや喜びを味わうこと。
● 領域の特性を踏まえた学習課題の捉え方
 ボール運動における「自分の思いや願いから設定した学習課題」とは、「ゲームを楽しむためにはどうしたらよいか」、「集団でさらにゲームを楽しむためには、どのようなルールの変更が必要か」 といった「ゲームを楽しむための自己の学習課題」である。そこで教師は、子供の実態や味わわせたい運動の特性、育みたい資質・能力を考えた上で、ゲームの「はじめのルール」を設定し、子供が「ゲームを楽しみたい」という思いをもつことができるよう支援していくことが大切である。 ゲームの理解が早い子供の中には「自分の今もっている力から設定した学習課題」として、「型やゲームに応じた効果的な動きについての自己の学習課題」を設定する子供もいる。「効果的な動き」とは個人の技能だけではない。勝利や得点に向けて、自分ができる「効果的な動き」は何かを考え学習課題を設定することが考えられる。
 チームの特徴が理解されることにより、目標達成に向けての取組から設定した学習課題として、仲間との連携(作戦)についての自己の課題を設定することも考えられる。子供一人一人が設定した学習課題とチームの特徴に合わせて考えた作戦が調和していくとは限らない。そこで、教師は子供、子供同士が学びの状況を把握できるように支援していくことが大切である。

一斉一律の課題解決的な学習から脱却するために

● これまでの学習
子供たちに学習内容を提示し、教師はそれを効果的に身に付けさせることに主眼を置いて言葉掛けや支援を行っていた。また、学習課題の設定から振り返りまでも教師が主導して学びを促していた。
● これからの学習
教師が学習内容を提示したとしても、個人やチームの学びの状況に応じて指導と評価を行っていく。教師と子供、子供同士が学びの状況を把握し、子供一人一人が自分やチームに合った学習課題を設定できるように、教師は学びを促していく。

子供一人一人が学習課題を自ら見いだすための手立ての工夫 【都小体研の研究の視点】

● 対話を重視した振り返り
子供一人一人の学習課題を教師が見取り、子供一人一人に合った指導や支援を行うことが必要 だと考える。そのために、教師が子供一人一人と話す時間が大切である。教師が一方的に「教える」だけではなく、「なぜ?」「どうして?」「次は?」など、「問いかける」ようにする。子供自身が説明することで、自己の学習を振り返ると共に、学習課題を見出すことができると考えた。
● ICT機器を活用した振り返り
子供がゲームの様相(プレイの様子)を振り返ることが、学習課題を見出すために大切な要素であると考える。自己だけでなく、仲間と「あの時(プレイの様子)」を共有するために、タブレ ットPC で撮影し、チームで見る学習活動が有効であると考えた。
● 学習カード等を活用した評価と支援
個人で記録する個人カードや体育ノートなどを通して、子供の学習課題を教師が適切に見取り、一人一人に合った指導や支援を行えるようにする。学習カードは、型や学年、学級の実態によって使い分けるために、選択して活用することが考えられる。いずれも子供がチームの状況やチームの課題の振り返りを行う際に活用することが大切であると考えた。

研究主題に迫るための工夫 【上記以外の工夫】

● ゲームの設定
アンケート等を活用し、子供のレディネスを把握した上で「はじめのルール」を設定する。単元の始めから全員が運動の楽しさやゲームの型がもつ特性を味わうことができるようなルールを設定することで、学習内容に沿った学習課題を一人一人の子供が見いだせるようになると考える。
● 1チームの人数を減らす
子供一人一人が学習課題を見出すためには、子供一人一人がプレイに参加する機会を確保する必要があると考える。学習環境や学級の実態、型の特性を鑑みた上で、出場人数は3名もしくは4名と設定する。

研究の成果と課題

成果

● 子供との対話や学習カードへの丁寧な評価により、子供一人一人がゲームを通して学習課題を見いだすことができていることが分かった。
● ICT機器を活用したことで、子供がゲームを振り返りやすくなり、ゲームの結果だけでなく、プレイの内容から学習課題を見いだすことができた。
● 学習中の発言や学習カードの記述を基に、子供が考えた学習課題を全体に共有したことで、知識・技能が向上した。

課題

● 教師の支援と言葉掛けの具体化
教師が「教えること」と、子供に「考えさせること」を明確にし、教師の具体的な支援方法や言葉かけの内容を精査していく。
● チームの課題と個人の学習課題の結びつき
子供一人一人の学習課題と、チームとして解決が必要な課題の結び付きを明らかにする。
● 学習資料の精査と開発
これまでに活用してきた学習資料の精査をするとともに、子供一人一人が「自分の学び」を把握し、またチームの子供同士が互いの学びを把握するための活用しやすい学習資料の開発を進める。

 
 
 
 

令和元年度の研究

三つの資質・能力の関係性を明確にし、
運動や健康についての課題に主体的・協働的に取り組む児童の育成

研究主題に対する部会の考え方

東京都小学校体育研究会研究主題に基づいて、本部会では目指す児童像を「ゲームや仲間に自ら関わる児童」とした。具体的なチームとしての姿は、「作戦を工夫する姿」、「連携して相手コートに返球する姿」、「課題解決をするために対話をする姿」と考えた。個人の姿としては「効果的な攻め方を知り、チームにより貢献する姿」、「ICT機器や学習カードで自分やチームを振り返るような姿」である。
また、そのために教員がとる手立てを「学習状況の関連を図り、学習過程を考え、学習環境を整える。」とまとめた。具体的には、「単元の学習状況を明らかにすること(視点1)」、「その関連を学習過程として示すこと(視点2)」、「指導と評価を意図的に行い、授業改善に生かすこと(視点3)」の3点である。さらに、本部会独自の研究内容として、「表現力を高めるICTの利活用」、及び「ネット型の教材を工夫すること」とした。これを受けて、研究仮説を「学習状況の関連を図り、学習過程を考え、学習環境を整えれば、ゲームや仲間に自ら関わる児童が育つだろう」とした。

研究の概要

三つの資質・能力(児童の学びの姿)と相互の関連及び評価の考え方

ball_kenkyu1
ボール運動領域では、ゲームを学習の中心として、チームや個人の課題を解決していく。単元前半では、中学年までの既習事項である公正・公平や安全などをもとに、ルールの理解や学級全体でルールを工夫していくことを重点とする。単元後半では、児童はゲームを通して、集団対集団の攻防を楽しみ、技能を高めたり作戦を深めたりすることができる。チームでゲームの勝利を目指して試行錯誤を繰り返すことで、新たな課題が生まれ、それを解決する学習過程を通して、三つの資質・能力がバランスよく育まれていくと考えている。

三つの資質・能力の関係性を明らかにした上での学習過程について

本単元のねらいは、「運動を楽しく行うために、自己やチームの課題を見付け、その解決のための活動を工夫するとともに、ルールを守り助け合って運動をしたり、仲間の考えや取組を認めたり、場や用具の安全に気を配ったりすることなどをできるようにすること」である。ゲーム?・振り返り・ゲーム?、と設定することで、課題を見付け解決するための方法を考え実践する学びのサイクルを身に付けさせるようにした。

評価を生かした児童の学習改善及び教師の指導改善について

児童がよりよく学習するために、動画の活用が効果的である。単元前半では教師が動画によって学習内容や課題を分かりやすく示したり、自己やチームの課題を共通理解させたりすることで、チームとして学習を改善し課題の解決に向かわせた。
また、学習中の児童の考えを教師がより深く理解するために、「対話に基づいた評価」と、「学習カードのポートフォリオ」を活用する。児童一人一人に対する言葉かけや、全体への「発問」を吟味することができ、授業計画の改善を図ることができるようにした。

研究主題に迫るための手立て

対話に基づいた評価

●教材の工夫
 明確な課題をチーム全員が共通してもつことのできるような教材を設定することで、児童の対話を促すことができる。
●学習カードのポートフォリオの活用
 個人の学びの積み重なりが視覚的にとらえられるようなカードを使用することで、児童の学びの軌跡を見取ることができる。児童一人一人に対する言葉かけや、全体への「発問」を吟味し、授業計画の改善を図ることができる。
●ゲームを振り返る作戦の視点の共有
 教師が作戦を指導するための観点を「役割分担」「動き方」「ボール操作」の三つとし、児童と教師が同じ視点から対話を繰り返し、学習を進めることで、個人、チームそれぞれの課題解決を図ることができる。

表現力を高めるICT機器の利活用

振り返る時に映像を根拠にすると、児童一人一人が話しやすくなることを指導に生かすことで、改訂学習指導要領で求められている児童の「表現力」を高めることができる。

研究の成果と課題

成果

●体育の学習が苦手な児童が、想定した学習過程に類似した形で個人カードの記載や教員の聞き取り内容が推移し、学習が進行した。
●リーダー以外の児童の話し合い参加、発言数の増加と共に、話し合いが深まった。
●プレイの回数が増加し、ボールが静止(停滞)している時間 が減少した。
●ボール運動が苦手な児童のボールを積極的に操作しようとする動きの変化が見られた。

課題

●「スピード」をテーマに学習を進めることに児童が必要感をもち辛い。
●攻撃まで組み立てることはできたが、最後のアタックを打ち切れない場面が多かった。今回の単元計画は速くつなぐことをポイントにしたが、身に付けさせたい力によってはアタックに対する手立てを 講じる必要がある。
●「1人1回のワンプレイ動画」としたねらいが伝わりにくい。