本日は早朝より、伊達市教育委員会教育長湯田健一様をはじめ、堰本小学校がいつもお世話になっている地域の皆様方においでいただき、この体育館とのお別れ式を開催できますことに、心から御礼申し上げます。
堰本小学校の体育館は、昭和31年に建築され、これまで数多くの子どもたちの健やかな心と体を育み、また地域の方々にもたくさん活用され、親しまれてきました。しかし、この度の体育館の改築工事に伴い、長年このお世話になってきたこの体育館が取り壊されることになりました。この思い出がいっぱい詰まった体育館とお別れすることは、仕方がないこととは言え、とても悲しく残念に思います。
この体育館は、ひとつの建物ですが、私たちにとっては単なる物ではありませんでした。ある時は、堰本小学校に喜びいっぱいに入学してくる1年生を暖かく迎い入れる入学式の会場であったり、ある時は、堰本小学校を期待と不安の中で巣立っていく卒業生の背中をそっと押してくれる卒業式の会場であったり、また毎日のように行われる体育の授業や学校行事、児童会活動の会場として、子どもたちの成長する姿をじっと見守ってくれるお父さん、お母さんのような建物でした。
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また、何より堰本小学校が誇りとする鼓笛隊の全体練習の場所がこの体育館でした。練習を重ねる度に少しずつ少しずつ上達していく皆さんの演奏をきっと頼もしく感じ、エールを送ってくれていたに違いありません。
今、静かに耳を澄ませば、過去から現在まで、長い歴史の中で、この体育館にこだましてきた子どもたちの歓声やたくさんの鼓笛の音が今にも聞こえそうです。
この体育館にまつわるお話をひとつ紹介します。今から十年も前のお話です。体育館の天井に取り付けてある蛍光灯が古くなって何本か付かなくなりました。ちょうど卒業式前でなんとか、新しい蛍光灯と交換したいと思いました。そこで、いつもお世話になっている電気屋さんに相談した所、交換するには、パイプで足場を組んでやるしかありませんよというお話でした。蛍光灯何本か交換するのに、たくさんお金がかかることになり、とても困りました。
ちょうど保護者の中に堰本小学校の卒業生で、しかも電気工事をしている方がいました。その方に相談しましたら、良い方法がありますよということでした。小学生の頃、体育館の後ろにある秘密の場所から天井に上がって、よく遊んでいたので、もしからしたら、そこからあがって蛍光灯を交換できるかも知れないという話でした。初めて聞く話で本当にびっくりしました。
次の日の夜、いよいよ秘密の場所から上がって蛍光灯を交換することになりました。するすると秘密の場所から天井に上がり、しばらくして蛍光灯を交換し終えて、また秘密の場所から降りてきました。その保護者の方の服は、ほこりで真っ白でしたが、顔はニコニコして、遠い昔のことを懐かしんでいるようでした。
全校生の皆さんにお願いがあります。この体育館はまもなく取り壊されることになります。この体育館で活動した数々の思い出を決して忘れることなく、この体育館に私たちは育てていただいたという感謝の気持ちをこれからもずっと持ち続けてほしいと思います。そして、この思い出いっぱいの体育館が解体され、新しい体育館に生まれ変わっていく姿を身近に見ることができるのは、皆さんだけです。変わりゆく堰本小学校の体育館の姿をしっかりと心に刻んでいってほしいと思います。
最後に結びとなりますが、本日は、大変お忙しい中、ご臨席をいただきましたご来賓の皆様、保護者の皆様に心から感謝申し上げ、お世話になった体育館とのお別れの言葉といたします。
平成26年6月20日
伊達市立堰本小学校長 丹治 睦雄