文部科学省に、『ROSATミッションに関するよくある質問(仮訳)』が掲載されておりますので、一部を抜粋し下記に掲載いたします。参考にしていただきたいと思います。
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1990年6月1日の打上げ以来、地球の上層大気との摩擦により、X線観測衛星ROSATは継続的に降下しています。同衛星は、2011年11月(★注意★最新の情報では10月23日と予想されています!)に起こると予測されている大気圏再突入の際に崩壊し、多くの破片は大気摩擦による高温で燃え尽きてしまうでしょう。このQ&Aでは、ROSATミッションと再突入について、最も一般的な質問にお答えします。
<ROSATミッションは、なぜ終了したのですか?>
ROSATミッションは、18ヶ月間の予定で計画されていました。しかし、非常に優れた科学的成果を提供したため、技術的に可能な限りミッションを延長することになりました。長期間にわたり、ROSATは、搭載されたシステムの経年劣化による影響を他のシステムで補うことができることを示しました。例えば、1993年に宇宙空間で衛星の姿勢を制御するジャイロの障害に対しては、新たな制御システムを実現しました。このシステムは、太陽と地球の磁場の方向を利用し、衛星の姿勢を決定するものです。そして1994年には、位置検知型比例計数管(PSPC)による測定に必要なガス供給がなくなり、消耗品を必要としない機器である高解像度カメラ(HRI)のみを使用して観測が実施されました。最終的に、1998年にミッションが終了しました。これは恒星センサの損傷により、観測に使用していたHRI検出器が太陽に直接向いたことで、回復不可能な損傷を受けたためです。これ以上の科学的利用ができなくなったので、ROSATは、打ち上げから8年半後の1999年2月12日に運用を停止しました。
<ROSATの再突入は、何らかの方法で制御されるのですか?>
ROSATには、軌道や再突入の経路を変更する推進装置が搭載されていません。つまり、ROSATの再突入が制御できないことを意味します。また、同衛星のミッションは1999年に終了したので、ROSATがオーバーブファッフェンフォーフェンにあるドイツ航空宇宙センター(DLR)のコントロールセンターと通信することは、もはやできません。8年以上の運用期間後も、ROSATの多くの部品は、期待された運用寿命を超え健全に運用されていました。先の回答で述べたX線センサの損失と、ジャイロの故障と同時に、衛星に電力を供給するバッテリーなど、その他のほとんどの部品は老朽化のため、限定的な動作状態、あるいは完全な機能停止状態になっていました。このため、衛星との通信を確立することは、もはや不可能です。
<ROSATは、地球大気圏再突入の際、燃え尽きてしまいますか?>
宇宙機やスペースデブリが軌道を離れ、地球大気圏に突入するとき、そのスピードは時速27,500km以上になります。再突入の摩擦で、その速度は10分足らずで亜音速まで下がります。再突入時の空気抵抗により、膨大な熱が発生します。米国のスペースシャトルの断熱材のように特殊な装備がないと、再突入する物体は、その大部分もしくは全てが燃え尽きてしまいます。このプロセスで、再突入時の熱と空気力学的な圧力により、衛星は粉々になります。DLRは、ROSATの再突入と破壊を分析しています。最新の調査では、全質量が最大1.6トンになる最大30個の残骸が地表に到達する可能性が考えられます。鏡、炭素繊維強化複合材料でできた支持構造物などのX線光学システム、またはその一部は、地上に到達する最も重い単一の部品となります。破片が地表に到達する場合、そのスピードは最大時速450kmになります。
<ROSATは、正確には地球のどこに落ちますか?>
再突入の正確な時刻と場所を予測することはできません。他の衛星の経験では、再突入6ヶ月前に、再突入の時刻は、10週間以内の範囲でしか予測ができません。再突入の時刻が近づけば、より正確な時刻が予測できるようになります。しかし、1週間前でさえ、3日以内の範囲でしか予測できません。衛星が90分で地球を1周することを考慮すると、3日間で40回以上地球を周回することになります。衛星が軌道を離れる1日前でさえ、時刻の予測はプラスマイナス5時間、地球6.5周回分になります。地球は、衛星の軌道の下で回転しているので、再突入後の残骸で影響を受ける可能性がある地表の領域(衛星の「地上軌跡」)は、軌道により変化します。このため、正確な再突入の場所や、地上への影響の可能性について明確に述べることはできません。再突入の予測時刻の数時間前に、再突入が起こる可能性のある軌道の地上軌跡を特定することができるかもしれません。衛星の破片が地上に到達する場合、それらは広がり、地上軌跡に沿って最大80kmの幅を持って落下します。その時点で、地球表面で再突入の破片に影響を受けない地表の範囲も正確に判明します。例えば、この期間にROSATが中欧地域上空を通過しない場合、その地域は、再突入による影響を受けません。
<衛星の再突入により、人が怪我をする可能性はどの程度ありますか?>
再突入の結果、人が怪我する可能性は、非常に低いです。再突入で燃え尽きなかった破片(理論上)により損害を受ける可能性があると予測される地表の総面積、衛星の軌道経路、地球上の人口分布を考慮し、地球上にいるどこかの誰かが怪我をする可能性を計算すると、約1/2,000と予測されます。これは、同様の再突入2000回のうちの1回に1人が怪我をするということです。ドイツ国内で人が怪我をする可能性はさらに低く、再突入700,000回のうち1回に1人が怪我をすることになります。
<再突入は、地球から観測することができますか?>
実際のROSATの再突入を誰かが観測できる可能性はかなり低いです。地球大気圏に突入する宇宙物体の多くは、目撃者やレーダーのない洋上や無人の地域に落下します。しかし、どのような場合においても、運用中および運用停止した衛星や大きなスペースデブリは、地球を周回する限り米国のレーダーによる宇宙監視システムにより軌道が監視されます。ドイツの科学者は、米国の監視データを入手し、ROSATの再突入までの数ヶ月間、その軌道の遷移や、地球大気圏へのゆっくりとした降下を追跡するためにそのデータを使用します。再突入が近づくと、大気によるブレーキの効果が徐々に強くなり、ROSATの軌道高度は、より急激に降下しはじめます。その時点で軌道をより正確に計算するため、ドイツのボン近くのヴァッハトバルクにあるフラウンフォーファー高周波物理・レーダー技術研究所の巨大な追跡画像レーダー(TIRA)施設を含む、より多くのレーダー施設が使用されます。また、再突入は、国際的な協力を通じて追跡され、再突入時刻や残骸の再突入経路をできるだけ正確に決定するための共同作業が行われます。この協力には、国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)を構成する国際パートナが含まれており、TIRAのデータを補足するため独自の測定値を提供し、貢献します。これらの測定値を利用することにより、海外の専門家は、独自の解析プログラムにより、DLRや欧州宇宙機関(ESA)のため、再突入予測の計算を行い、ドイツの専門家を支援します。これらの全ての情報は、ダルムシュタットにある欧州宇宙運用センター(ESOC)に収集され、評価された後、DLRに送られます。
<ROSATを捕獲し、制御された状態で地球に戻さないのはなぜですか?>
衛星を捕獲し、制御された状態で軌道離脱する技術は、まだ開発中です。こういった運用の実現性を証明する目的で、最初の実証ミッションを打上げるまで、少なくともあと数年はかかります。しかし、このような技術が可能になっても、制御された再突入の対象になる物体は、ほんの数個ほどで、ほとんどの衛星やロケット上段は対象になりません。
<他の衛星の再突入は、予測されていますか?>
衛星の再突入は、避けることはできません。スペースデブリの地球大気圏再突入は、ほとんど毎週起こっています。ここ数年間で大気圏に突入したスペースデブリの総質量は、年間約60トンから80トンになります。この中には、小さなスペースデブリから、使用済みロケット上段や、あらゆる形やサイズの衛星等が含まれます。スペースデブリの破片が地上で見つかることはごく稀なことです。地上に到達する自然物体(隕石)の総質量は、宇宙活動による人工物体や破片からのスペースデブリの量を遥かに凌ぐものです。
※出典:ドイツ航空宇宙センター(DLR)のホームページ
DLR Portal - Frequently asked questions - The ROSAT mission – frequently asked questions(※ドイツ航空宇宙センター(DLR)のウェブサイトへリンク)
URL:
http://www.dlr.de/dlr/en/desktopdefault.aspx/ta...
お問い合わせ先
研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付
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